本作では、匂いを発する人や物が過度に制限された結果生じる「無臭社会」とも言える未来の世界が舞台となります。ここでは自身を表現する匂いも、記憶を呼び起こす匂いもありません。未来の人々は、失ってしまった匂いをどのように悼むのか。その様が描かれます。
コミュニティを形成するなかで、他者の存在を認める寛容さが求められる一方、無意識のうちに他者との境界を生じさせる、匂いの存在。匂いを出発点に描かれる本作の体験を通じて、現代社会におけるテクノロジーやコミュニケーションのあり方について深く考えるきっかけとなるでしょう。