ふたつの建物
大小2つの円筒形の建築から構成されており、両者は外観の形状こそ似ていまるが、その構造は対照的なものとなっている。
小さな建築の方は、その中心に小さな庭が設けられ、その周囲を取り巻くように部屋が広がっている。部屋は競輪の滑走路のように外周に向かって傾斜が付いており、猛スピードでぐるぐると走り回れるようになっている。また大きな建築の方は、その中心に小さな部屋が設けられ、その周囲を取り巻くように庭のような空間が広がっている。中心の部屋には、ジャングルジムや不定形な床面が所狭しと並べられ、そこを移動する中で非日常的な身体の動きを発見することになります。
いずれも設計は、建築ユニット「assistant(アシスタント)」が担当している。
水と土と通信技術
「コロガル公園」と同様に、内部には照明やスピーカーが埋め込まれており、それらを介した新しい「遊び」やコミュニケーションが可能となっている。それらが屋外ならではの自然の気配と相まって、独特の環境が立ち上がります。
変わり続ける機能
「コロガル公園」と同様に、会期中には「子どもあそびばミーティング」を開催し、機能がアップデートされ続ける。代表的な例としては、来場者の「ヤギがいたらいい」というアイデアから、公園に本物のヤギが追加されたことがある。このヤギは、山口県美祢市の秋吉台サファリランドの協力によって実現したもので、子どもたちはヤギに食べさせるための草を公園内から集めたり、本物のヤギがいる状況から新しい遊びが生まれた。
自治の発生
会期が進むにつれ、利用者の子どもたちはコロガルパビリオンを誰かから一方的に与えられる〈サービス〉としてではなく、自分たちの〈環境〉として捉えるようになり、遊びだけではなく、自らイベントを企画・開催し、参加者を募ったり、YCAMが定期的におこなう掃除やメンテナンスを手伝うなどの自治的な営為が発生した。
そうした営みの極点が、署名運動である。ほぼ毎日利用していた山口市内在住の小学3年生を中心とする子どもたち数人が、会期が終了する2週間前に、会期の延長を求める署名運動を開始。彼らの運動は公園を飛び出し、周囲の大人も巻き込みながら、2週間あまりで約1000人の利用者から署名を収集。結果的に、発表翌年の2014年までコロガルパビリオンを保存し、再開することになった。利用者はこの一連の過程を通じて、遊びを起点に、YCAMの手を離れ、自分たちの手で社会を動かす経験を得るまでに至った。