人は、庭園という閉ざされた空間に、理想的な自然風景をつくって生きてきたが、日本の庭園の要にあるのが、石を立てることであった。石を立てることをめぐっては、縄文時代、人々が集落の中心に、祭祀の空間や集合墓地として作り上げていた環状列石にまで遡ることができ、これらは、そこから見える山々の風景や天体の運行との密接な関係を持っている。一方、かつて、道と道が交差する辻のような境界的領域は「市の庭」という、様々な人が往来するとともに、商品交換や芸能、占術といった多様な活動が行われる、日本古来のオープン・スペースとも言うべき場であった。石はそのような空間にも置かれ、その場所を守護し、邪悪なものの侵入を防ぎ、また、子孫繁栄、商売繁昌を保証する神として崇拝されてきた。
これらの思考を背景に、プレゼンテーション1では、庭園と環状列石を同一平面上に置き、それらの石の配置と周囲の山勢との関係を探るシステムを公開し、プレゼンテーション2では、庭園の外における、石と人々の生との関わりにより微視的にアプローチするため、山口市内における様々な石をめぐって行われたフィールドワークの成果を多角的に提示した。